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冷却水の分析項目についての説明

項目名測定の目的など影響
腐食スケール
【pH】pHは、腐食やスケールの傾向を把握する上で基本的な水質因子です。冷却水は薬品処理すること、濃縮されることから多くはアルカリ性です。清浄な天然水はpH5~9の範囲に入っています。
【電気伝導率】冷却水に溶けているイオン量により、値が変化します。電気伝導率が高い水は電気抵抗が小さいため、電位移動が多く、腐食が進みやすい傾向にあります。単位はジーメンス[S/m]で表され、日本における平均は、河川;10mS/m前後、海水;4,000 mS/m前後です。
【塩化物イオン】水中での安定性は高く、循環系の濃縮倍率管理に使われます。腐食に関わる重要な因子の一つであり、腐食の面からは塩化物イオン濃度が低いことが望ましいです。水質の汚染度合を知る因子の一つでもあります。 
【硫酸イオン】腐食に関わる重要な因子の一つです。開放系冷却設備では、自動車や工場の排気ガスに含まれる亜硫酸ガスを吸収し、冷却水中の硫酸イオン濃度が高まることがあります。硫酸イオン濃度が高い水は、鉄管の腐食やスケール障害につながりやすく、冷却水には適しません。 
【酸消費量(pH 4.8)】腐食とスケールの傾向を知る指標です。酸消費量(pH4.8)が高い冷却水は炭酸水素塩や炭酸塩、水酸化物などが多く含まれているため、スケール化の傾向が高く、酸消費量(pH4.8)が低い冷却水はpH変動しやすいため、腐食の傾向が高くなります。
【全硬度】溶存しているカルシウム硬度とマグネシウム硬度の和です。カルシウム硬度はカルシウムイオン濃度を、マグネシウム硬度はマグネシウムイオン濃度を炭酸カルシウム濃度に換算した値です。炭酸カルシウムはスケールの主成分の一つです。全硬度が高ければ、スケール化の傾向が高い状態にあります。冷却水の循環系の濃縮倍率管理にも使われます。
【カルシウム硬度】溶存しているカルシウムイオン濃度を炭酸カルシウム濃度に換算したものです。カルシウム硬度が高ければ、炭酸カルシウムが主成分のスケールの要因の一つになります。
【イオン状シリカ】 シリカの形態は複雑ですが、冷却水中に含まれるシリカは、測定が容易なイオン状シリカを指標として管理します。イオン状シリカが高ければ、シリカが主成分のスケールの要因の一つになります。シリカの構造は安定しているため、スケール除去は薬品処理などのテクニックが必要です。酸性側では除去しにくいスケールを形成し、アルカリ性側では各種金属と複合的なスケールを形成することがあります。
【鉄】地殻に5%前後含まれており、未処理の工水に含まれます。また、使用した配管などからの溶出の場合もあり、鉄イオンが腐食や鉄さびによるスケールを発生させます。また、沈着により冷却塔に汚れを発生させたり、冷却水に着色させたりします。
【銅】主に給水などの熱交換装置に使用された銅管、黄銅器具などからの溶出が多く、検出された場合は、注意が必要です。銅は亜鉛めっき鋼管、鉄管、アルミ製品などの腐食促進の要因の一つです。
【硫化物イオン】腐食の原因の一つです。硫化物イオンは、pHが酸性側になったときや溶存酸素があったときに硫酸イオンに変化し、腐食が進行します。硫酸イオンは銅や鉄鋼などの多くの金属材料と反応します。また、硫酸イオンは硫酸還元菌により消費され繁殖するとともに、硫化水素が発生します。硫化水素は人体へ影響を与えたり、腐食を進行させたりすることがあります。 
【アンモニウムイオン】主に窒素系有機化合物が分解して生じます。アンモニウムイオンは銅と反応するため、銅の溶出(腐食)が進みます。 
【残留塩素】殺菌のため水道水に添加されています。塩化物イオンとは化学的に異なり、残留塩素には強い酸化力があります。残留塩素は高濃度で存在すると金属の腐食の要因の一つになります。また、水温が高い状態では腐食傾向は強まるため、温水系の残留塩素濃度の管理は重要です。 
【遊離炭酸】水中に溶けた二酸化炭素の濃度です。大気中の二酸化炭素の溶解だけでなく、炭酸塩の分解に由来していることもあります。遊離炭酸は水素イオンと炭酸水素イオンに乖離し、pHを低下させます。遊離炭酸の濃度が高いと、鉄、銅、亜鉛などの金属を腐食させたり水槽のコンクリートを溶解させたりすることがあります。 
【安定度指数】水の腐食性とスケール生成の傾向を表します。炭酸カルシウム飽和pHと実測のpHから計算して求めます。その値が6未満だとスケール傾向、7以上だと腐食傾向を示します。炭酸カルシウム飽和pHは、カルシウムイオン濃度、酸消費量(pH4.8)、pH、水温および溶解性蒸発残留物から算出します。
【亜硝酸イオン】鋼材に対する酸化皮膜型防食剤の成分であり、亜硝酸イオン濃度を測定し鋼材表面への防食皮膜形成効果を確認します。一方で、亜硝酸イオン(亜硝酸態窒素)は富栄養化の原因物質であり、変化したニトロソアミンは健康に悪影響を与える成分でもあることから、亜硝酸を使用しない処理が各社から開発・提案されています。 
【ナトリウム】ナトリウムイオン(Na⁺)は一般の河川水中に1~10mg/L程度含まれています。地下水は、下流に向かうに従ってナトリウム濃度が増加する傾向があります。  
【リン酸】鋼材および銅材に対する沈殿皮膜型防食剤の成分であり、残留濃度を測定することで鋼材表面への防食皮膜形成効果を確認します。一方で、亜硝酸イオンと同様にリン酸も富栄養化の原因物質であるため、これを使用しない処理が開発・提案されています。
【マンガン】自然水中のマンガンは鉄と共存し、その量は鉄のおよそ10分の1といわれています。配管内壁に付着したマンガンが流速の変化で剥離流出し、残留塩素によって水が黒く着色することから、色度上昇の原因になることがあります。ステンレス鋼管において析出した二酸化マンガンが応力腐食割れを発生させる要因となることがあります。
【全カチオン】工業用水に含まれる一般的な陽イオン(全硬度、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ナトリウム、カリウム、アンモニウムイオン)の量を総計したものを全カチオンといいます。  
【全アニオン】工業用水に含まれる一般的な陰イオン(酸消費量(pH4.8)、塩化物、硫酸、亜硝酸、硝酸、リン酸イオン濃度)の量を総計したものを全アニオンといいます。  
【溶解性蒸発残留物】水を蒸発乾固したときに残る物質で、水中に存在するすべての物質のうち、粗大物(粒径2mm以上)と溶存ガスおよび水より沸点の低い物質を除いた総量(浮遊物(SS)と溶解性物質(DM)の和)に相当します。蒸発残留物は純粋な水ほど小さく、夾雑物が多い程大きくなり、水の性状を表す上で最も基本的な項目の一つといえます。日本の河川水の蒸発残留物は通常 200mg/L程度以下、地下水でも 500mg/L程度といわれています。海水は約35000mg/Lです。 
【飽和指数】炭酸カルシウムスケールの生成しやすさを示す指標です。飽和指数は実際のpHと理論的pHの差から求めます(ランゲリア指数ともいいます)。飽和指数が正の値であれば炭酸カルシウムの析出が起きやすく、“0”であれば平衡状態、負の値であればば炭酸カルシウムスケールが起きにくいことを示します。絶対値が大きければ、水の腐食傾向が強くなります。
【マトソン比】酸消費量(pH4.8)/硫酸イオン濃度の比で計算され、銅の腐食発生リスクに対する指標です。数値が大きい方が腐食発生しにくいと判定されます。 
【硫酸/塩化物イオン比】ステンレスの腐食に関する指標です。数値が低いと腐食しやすい傾向にあります。 
【SO4+Cl/アニオン】銅材に対する孔食発生リスクを評価する為に使用する値です。 
【孔食指数】銅材に対する孔食発生リスクを、SO4+Cl/アニオン、酸消費量(pH4.8)と塩化物イオン濃度、硫酸イオン濃度から計算により判断できる指数です。 
【カチオン/アニオン】全カチオン/全アニオンの比を表した値です。陽イオンと陰イオンの濃度バランスを確認する指標です。